ブラームス交響曲第2番の解説

 ヨハネス・ブラームス

(独: Johannes Brahms、1833年5月7日 - 1897年4月3日)

ブラームス 交響曲第2番 ニ長調 作品73

 

前作の交響曲第1番と第2番は対称的な作品であり、作曲期間・曲調・楽章ごとの調性の3点によく注目される。

 

まず第1番は作曲に20年以上かけたのに対し、第2番のスケッチは3か月ほどで完成し、第1番の完成(1876年)からわずか1年、 1877年10月に第2番は完成した。

 

この作曲期間も影響してか、第1番が重厚で悲愴的なのに対し、第2番は流れるようで、どこかさわやかさすら感じさせる。

この時期のブラームスはオーストリアの避暑地ペルチャッハで作曲をしており、自然から受けた感銘と感激、喜びをこの交響曲に込めた。

この曲調についてはブラームス自身も「新婚の若い夫婦のために書かれたように 明るくて愛らしい曲だ」と上機嫌に周囲に語っていたという。

 

曲の進行に注目すると、楽章が進むごとに三度ずつ上昇し高揚を感じるような第1番に対し、第2番は逆行して三度ずつ下降 していき落ち着き静まる穏やかさを感じるような調性となっている。

第1楽章  Allegro non troppo


冒頭は第3,4交響曲と同じく序奏なく始まる。

この冒頭のチェロ、コントラバスの音形が最初のホルンによる主題の導入となり、対声となり、この楽章のみならず全楽章における基本モチーフとなる。これだけ交響曲全体を支配するこの動機にブラームス自身のこだわりを感じる。

 

そうして始まる提示部ではこのモチーフを展開しつつ雄大で伸びやかな自然を表すかのような穏やかな曲調である。

 

展開部では、長さは古典的なソナタ形式の展開部における長さといえ、前述の基本動機と主題を用いることもあり、第1交 響曲同様にベートーヴェンへの尊敬が表れていると感じることができる。

 

そうして迎えた再現部はこれもまた古典的なソナタ 形式から外れることなく、完全な再現ではないものの短縮された中にも随所に提示部での主題や動機が使われている。

 

そうしてコーダへと突入していくが、ここでは最初に短い盛り上がりを見せるものの全体としては次第に勢いを弱め最後は消えるように終止する。

 

第2楽章  Adagio non troppo


第1楽章の伸びやかな雰囲気からは一転し、暗く沈んだような曲調となる。形式は緩徐楽章に多く見られる三部形式である。

そのうち提示部と再現部ではロ長調を使用している。

 

ロ長調は交響曲全体のニ長調の並行調であるが、長調でありながらどこか陰気さを感じる調でもある。

 

主題もどこかさまようようなどんよりとしたものばかりで、深く暗い森の中をまよい歩いているかのような気分にさせる。

第1交響曲で20年の歳月をかけた苦労を思い出すブラームス自身のようにも感じられるのではな いだろうか。

 

提示部は主題がチェロから始まり、暗さも明るさも見せつつ進行していく。

 

一方中間部は明確な主題こそないものの、どこか明るさを感じるようになる。

 

そうして再現部を迎えるがこれもまた第1楽章同様に提示部から展開をしている。

この楽章にもベートーヴェンの手法は使われており、中間部の終わりには提示部の主題が表れ再現部へと向かう流れや、再現部で中間部 のリズムを対声として用いる点にみられる。 

第3楽章   Allegretto grazioso (Quasi Andantino)


第2楽章を挟み再び牧歌的な音楽となる。

 

形式は小ロンド形式(A-B-A-B’-A)で、オーボエが印象的で穏やかなAパートと 弦楽器が中心となって駆け抜けるようなBパートの対照的な2つの音楽が繰り返し現れる。

最後は穏やかなAパートで終結する。

第4楽章  Allegro con spirito


第4楽章は第1,2楽章同様序奏なしのソナタ形式である。

 

弦楽器ユニゾンで始まり管楽器が加わったかと思うと間もなく遠ざかっていく。

 

かと思えば爆発するかのような強奏で幕を開ける。冒頭のユニゾンの主題に加え、ヴァイオリンとヴィオラの深みのある主題がさまざまな形で展開され、再現部、コーダと経過とともに壮大さが増していき、クライマックスは金管楽器のファンファーレも加わりとても祝祭的な終止となる。