ブラームス交響曲第3番の解説

 ヨハネス・ブラームス

(独: Johannes Brahms、1833年5月7日 - 1897年4月3日)

ブラームス 交響曲第3番 ヘ長調 作品90

 

ブラームスの交響曲の中で、最も演奏される機会の少ないこの作品だが、第1番や第2番と比べて「芸術的に完璧な作品として心を打つ。」と絶賛されるほど、初演は大成功を収めたとされている。

 

過去の2つの交響曲で統一的な基本動機を用いていたが、(第1番ではC―C♯―D、第2番ではD―C♯―D)この曲では、 基本動機からさらに一歩踏み込んだ形として、モットー(F―A♭―F)を使用している。

この音型は、ブラームスが好んだと いう”Frei aber froh”(自由だが喜ばしく)という言葉の頭文字と結び付いている。

 

交響曲の主調がヘ長調でありながら、ブ ラームスがあえてF―A♭―Fというヘ短調に属する音型を用いていることは興味深い。ここから生じるヘ長調とヘ短調の葛藤 は、全曲の性格に決定的な影響を与えている。

第1楽章 Allegro con brio


冒頭、堂々とした管楽器のモットーから始まり、ヴァイオリンが第1主題を示す。

 

モットーの持つヘ短調の響きが、表情に 陰りを与えている。このモットーは、第1楽章全体を支配している。静かな経過句を経て9/4拍子になり、クラリネットが 第2主題をイ長調で奏でる。

 

主題のあとには第2交響曲の基本動機も顔を出す。展開部は情熱的に始まり、低弦が第2主題を暗 い嬰ハ短調で奏する。

静まると、ホルンがモットーに基づく旋律を大きく示す。第1主題の動機を繰り返しながら高まって、 再現部に達する。

 

コーダでは、モットーと第1主題が絡み合うが、収拾されて静まる。モットーが響く中、第1主題が消え入 るように奏されて終わる。

第2楽章 Andante


第1主題はクラリネットとファゴットのひなびた旋律。各フレーズの終わりでモットーが示される。

この第1主題に含まれる、3度をゆらゆらを反復する動機も印象的である。第2主題は同じくクラリネットとファゴットが新たにコラール風の旋律を奏する。

 

ヴァイオリンの新しい旋律に受け継がれてから、経過的な展開部に入る。展開部は比較的小規模で第1主題の断片を奏して再現部を導く。

コーダでは第1主題が静かにクラリネットで奏されてから曲が終わる。

第3楽章 Poco allegretto


木管の響きの上に、チェロが旋律を歌う。

中間部は変イ長調で、主部の旋律はホルンによって再現される。

 

なお、この楽章 で使用されている金管楽器はホルン2本のみである。

第4楽章 Allegro-Un poco sostenuto


ファゴットと弦楽器が第1主題を示す。トロンボーンの同音反復に導かれて、第2楽章のコラール風動機が奏される。

音楽は激しくなり情熱的に進んでいき、第2主題はハ長調、チェロとホルンによる三連符を用いたものが奏される。

 

展開部は第1楽章の再現を兼ねており、コラール風の動機が強奏で繰り返され、ハ短調から半音ずつずり上がってヘ長調に達し、ヘ短調となる。

 

コーダに入ると、第1主題が表情を変えながら繰り返され、やがてヘ長調に転じる。

モットーが現れ、弦楽器の細やかな 反復する動きに乗って、コラール風の動機が示され、最後には第1楽章第1主題が回想され、静かに曲を閉じる。