ジャン・シベリウス: Jean Sibelius
(1865年12月8日- 1957年9月20日)
シベリウスはフィンランドを代表する作曲家として知られる。
様々な演奏会で取り上げられる機会の多い「交響詩『フィンランディア』」は有名であるが、この交響曲第1番も同じく1899年の作品である。
フィンランドは20世紀初頭まで長く大国の支配を受けており、独立の背景にはフィンランドの民族的自覚の高まりがあり、シベリウスの作品も少なからず影響しているのではないだろうか。
シベリウスには強い民族意識があり、それは作品にも表れている。
そんなシベリウスの作品は1890年代にはフィンランド人に広く受け入れられおり、この交響曲第1番と「交響詩『フィンランディア』」が続いて発表されたことで、フィンランドでのシベリウスの地位は確固たるものとなり、現代に至るまでシベリウスはフィンランドを代表する作曲家として親しまれている。
第1楽章 Andante, ma non troppo - Allegro energico
冒頭はティンパニの音の霧の中から登場するクラリネットのソロで始まる。
どこか怪しげな、光の見えない旋律から突然弦楽器のトレモロが霧を碳るように登場する。
そこからは決然とした第1主題となり冒頭とは異なり明るく呈示される。
第2主題、第3主題はフィンランドらしい権大な自然を感じさせる。
第2主題ではフルートの澄んだ音楽が、第3主題では弦楽器の長いシンコペーションを背景にオーボエを起点として様々な楽器によって繰り返される音楽が奥行きをも感じさせる。
そこから激しく展開し金管楽器を加わり大きく盛り上がりを迎える。
ここからは登場した主題が何度も入り混じり、クライマックスへと駆け上がり金管楽器によるコラールから決然とした雰囲気で楽章の最後へと到達する。
第2楽章 Andante, ma non troppo lente
第1楽章の終わりの雰囲気からは大きく変わり、ハープが入ったとてもゆったりした雰囲気で始まるこの楽章は、調性、形式ともに特異でありこの交響曲の中で最も特徴のある楽章といえる。
冒頭の主題は第1ヴァイオリンとチェロによるもので、聴いていると歌詞すら感じそうになるほど歌のような温かさをもつ。
この主題がフーガによって変奏され、ホルンによる旋律がテンポを変え登場すると、冒頭の主題はさらに変奏のバリエーションを増やし、様々な形で展開されていく。
大きく盛り上がりクライマックスかと思うと、最初の穏やかな曲調へと突如として回帰し、遠ざかるように楽章を閉じる。
第3楽章 Scherzo : Allegro
スケルツオとなるこの楽章も前楽章から大きく変わり荒々しい弦楽器のピチカートの連打と激しいティンパニの星示する主題から始まる。
この主題は楽章の各所で現れ、ティンパニがその旋律を受け持つのは珍しい構成であるといえる。主題が展開し、突如として中間部(トリオ部)に入る。
ホルンによる主題で、荒々しい中での穏やかなこの中間部は大きく印象として残る。そしてフルートによる旋律が続いたのち、再び荒々しく再現部へと急転直下するように突入し、最後はさらに勢いを増して駆け抜けるように楽章を終える。
第4楽章 Finale:quasi una fantasia
上記にある”'quasi una fantasia”すなわち「幻想曲のように」という言葉の通り、特定の形式に縛られない幻想曲のような楽章となっている。
冒頭は第1楽章はじめのクラリネットが奏でたどこか不穏だった主題を弦楽 が非常に情熱的に(楽譜にも"largamente ed appassionato”「豊かに、熱情的に」と記されている)演奏され、これが木管楽器へと移り第1主題へと向かう。
第1主題は短いが、シンコペーションのリズムからなるものでエネルギーに満ちている。
短い主題がオーケストラ全体で大きく展開され、楽章全体に散りばめられている。
第2主題でも第1楽章と共通して、シンコペーションの伴奏にヴァイオリンが艶のある旋律を乗せる。再び第1主題へと戻ると
より細かい音符が増えることで1回目よりもどこか騒がしさが増したように感じる。
そして再度第2主題が木管楽器によって再現されると、第1主題同様に1回目よりも感情が表に見えるような印象を与える。
そして主調のホ短調へと回帰し金管楽器も加わりクライマックスへと向かう。
第1楽章同様クライマックスから最後までが短く、緊張感あるまま駆け抜けるかと思えば、最後は楽器のピチカート。
しかしこのピチカートは第1楽章と異なり、急激に静まるように弾かれて4つの楽章の最後を締める。
コメントをお書きください