シベリウス交響曲第5番の解説

ジャン・シベリウス: Jean Sibelius

(1865年12月8日- 1957年9月20日)

シベリウス 交響曲第5番 変保長調 作品82

 

ジャン・シベリウス(1865年~1957年)は、後期ロマン派から近代にかけて活躍したフィンランドの作曲家である。

シベリウスの作曲した交響曲は全部で7曲あり、第5番はシベリウスの生誕50年に当たる1915年に作曲された。

 

交響曲第5番は、伸びやかで祝典的な気分の交響曲である。第4番の作曲前に直面していた癌による死の恐怖から解放された喜びを反映しており、生誕50年を自らも心から祝うことができる心理状態になっていたことを物語っている。

 

第1楽章 Tempo molto moderato – Allegro moderato


 ソナタ形式の前半とスケルツォの後半からなる。冒頭、北欧の大きな自然を暗示させる伸びやかなホルンの問いかけに、小動物が応えるかのように木管楽器が応えて第1主題群を形成する。

 

2主題は「ややフルート風に」と指定された弦のトレモロに乗って木管楽器群で提示される。第2主題が遮られ、高揚して小結尾となった後、提示部は変奏的に反復される。

 

展開部ではホルンの橋渡しを経て弦楽器が第2主題に基づいた半音階的楽句を奏で始め、木管楽器が短く応える。

ざわめく弦に乗ってファゴットに受け継がれ、曲は一旦ラルガメンテにテンポを落とし、幻想曲風になった後、高揚して再現部となり、第1主題と続くスケルツォ主題の変形を取り込みながら巧みにアレグロ・モデラートへ入る。

 

スケルツォ主題は木管により演奏される牧歌風のものだが、第1主題も巧みに交わりながら変奏的に発展してゆく。

中間主題(事実上のトリオ)はトランペットにより提示される。

 

やがてスケルツォの荒々しい雰囲気が回帰し、曲は終結部に向かって徐々に高揚しクライマックスでプレストのトランペットによる終結主題で晴れやかな頂点を飾り、終止する。

第2楽章 Andante mosso, quasi allegretto


 変奏曲の形式による緩徐楽章。主題はヴィオラとチェロのピッツィカートにより提示される純朴な歌である。

この主題が様々な楽器に引き継がれながら6回変奏されて行く。

第3楽章  Allegro molto


ABAB-コーダの構成を持つフィナーレ。弦のトレモロがやがて疾走するような第1主題を低弦部で形成する。

 

やがてホルンが二分音符からなる鐘の響きのようなモチーフでこれに応える。

このモチーフは低弦による拡大形と組み合わされる。

 

いかにも田園的な第2主題はフルート、オーボエとチェロによって表情的に歌われる。やがて木管が軽妙に現れて弦のトレモロが合わされ、第1主題の再現に移る。

 

ミステリオーソ(神秘的に)」と表記され、弱音器をつけた弦楽器のトレモロにより第1主題が再現されてゆく。

 

2主題は、フルートとクラリネットに回帰し、「ウン・ポッケッティーノ・ラルガメンテ(幾分幅広く)」へ移行する。

2主題は弦に受け継がれ、ホルンの二分音符モチーフも加わる。

 

さらに弦が強調され、「ラルガメンテ・アッサイ(十分にたっぷりと)」となり、ホルンにより提示されたモチーフがトランペットで朗々と奏でられた後、休符の目立つ和音の6つの連打によって全曲の幕を閉じる。