シベリウス交響曲第6番の解説

ジャン・シベリウス: Jean Sibelius

(1865年12月8日- 1957年9月20日)

シベリウス 交響曲第6番 ニ短調 作品104

 

この交響曲第6番の作曲は1914年ごろから第7番とともに第5番と同時期に行われていた。

シベリウスの生50年を記念した第5番の作曲が優先であったため、完成までは時間を要している。

 

もともとこの交響曲の楽想はヴァイオリン協奏曲とすることをシベリウスは考えていたが、この考えは早い段階で取り下げられており、交響曲としての作曲を進めていった。

 

しかし、第一次世界大戦をはじめとする情勢の悪化に伴い作曲は中断を余儀なくされる。大戦後フィンランドがロシアから独立し、シベリウスは作曲を再開する。

 

この頃のシベリウスの周囲では訃報が相次いだ。

長年シベリウスの活動を支えていたパトロン、さらにチェロ弾きで音楽仲間であり仲の良かった弟の死である。

 

1923年にようやく交響曲第6番が完成するものの、当初自身で「荒々しく情熱的」と自ら記していたこの交響曲は実際にはかなり宗教的で教会旋法が各所に表れており、どこか憂いを感じさせるのは長い作曲期間にシベリウスの身の回りで起きた出来事がこの楽想の変化につながったのではないだろうか。

第1楽章 Allegro molto moderato


 通常よりも自由な構成をとるソナタ形式である。この楽章には全体を通しての特定の動機(モチーフ)はあまり感じず、主題を繰り返すことで展開を重ねているようである。

 

冒頭はヴァイオリンから始まる静かな序奏に始まる。これも教会旋法によるもので、和音は単純ながらもどこか懐かしさを感じさせる。

この主題が展開し、木管楽器を中心とした第1主題となる。

 

弦楽器も加わり発展したのちよりスピード感のある第2題も同じく弦楽器の伴奏の中でフルートを中心とした木管群により提示される。

再現部では両主題ともに再現され、ホルンの和声と弦のトレモロからなるコーダへと続く。

最後は冒頭主題が登場し、静かに終止する。

第2楽章 Allegretto moderato – Poco con moto


1楽章同様教会旋法の主題をフルートとファゴットが受け継いだかのようにして始まる。

冒頭は3拍子ではあるが聴こえる音楽は3拍子には感じない、しかし8小節ほどで突如3拍子の音楽に戻るというシベリウスによる耳の錯覚を利用した始まりである。

 

上昇音型が繰り返されて発展し、終盤活動的になるものの、突然落ち着きを取り戻したかのように静かな終止を迎える。

第3楽章  Poco vivace


スケルツォのような楽章である。

付点のようなリズムが楽章の随所に現れ、この楽章の特徴ともいえる。

 

1主題、第2主題ともに木管楽器によって提示され、そのまま木管楽器を中心に展開される。

コデッタ部分は木管楽器と弦楽器が付点のようなリズムを交互に繰り返し、突如として金管楽器のアクセントによって再現部へと突入する。

 

再現部は導入部こそないものの、それ以降は各主題が再現される。

最後はコデッタの終止部のような形でここまでの楽章と異なり荒々しいまま終結する。

第4楽章 Allegro molto – Doppio piu lento


三部形式からなる。この楽章も冒頭から終始教会旋法を感じさせ、どこかはかなさを感じさせる。

 

木管楽器、ホルン、ヴァイオリンによる問いかけにヴィオラとチェロが応える形で主題が提示される。

この楽章では冒頭の主題が各所で展開されており、中間部においても展開していく中で要素が現れている。

 

この交響曲においてスコア上の指示で最大となる”fff”でクライマックスとなり、そこからは主題の再現が掛け合いのよう

な形で変奏される。

終盤はさらにテンポは落ち着き、弦楽器を中心とした荘厳な長めのコーダとなり、最後ははるか遠くへ消えゆくように終止する。